勢いも大切

会社に行くと、私の異動辞令が出ていた。どうやら、4月1日付けの異動らしい。

彼と過ごすことのできる時間は、残り1ヶ月あまり。出来ることなら、彼と、もっと同
じ時間をともにし、仕事も一緒にしたい。だけど、会社の決定は曲がることはない。この
1ヶ月で私に何が出来るだろうか。
異動通知を確認し、事業所に入ると、色んな人から、励ましの言葉をもらった。一つ一
つの言葉に笑顔で答えながらも、心境はすごく複雑だった。
昼休みになり、一人でご飯を食べていると、私の事情を知ってる同僚が近づいてきた。

同僚「いよいよ出てしまったね。辞令」
私「そうなんだよね~。どうしよう」
同僚「出てしまったものは取り消せる訳ではないんだし、いよいよ、覚悟を決める時が来
たんじゃないかな」
私「そうかなぁ。確かに、会社内で一緒に入られる時間は残りわずかだし、何かかしらの
行動はしないと絶対後悔するよね。バレンタインも、チョコをあげただけで、言葉にし
て伝えてはいないもんね」
同僚「そうだよ。前にも言ったけど、言葉にしないと相手には伝わらないよ。私は、応援
しているから頑張れ!」

そんな話をしていると、遅れて休憩に入った彼の姿が目に入った。すると、同僚が、
「私は席を外すから、手始めに食事でも誘ってみたらどうかな?少しでも距離を縮めるチ
ャンスと思ってさ」
という言葉だけ残し、その場を後にした。そして、入れ替わるように、彼が私の席にやっ
てきて座った。

私「ちょっと遅めの休憩だね」
彼「うん。休憩前に片付ける仕事があってね」
私「そっか。そっちも大変だね」
彼「そうだね。それより、4月1日付の異動に決まったんだってね」
私「そうなんだ。だからこれから、仕事の引継ぎしなくちゃいけなくてさ」
彼「そっか。異動する側も大変なんだね」
私「うん。あのさ、近いうちに、食事に行かない?」
彼「食事?うん、いいよ。今日はちょっと都合悪いから、来週の金曜日に行かない?」
私「うん。私も特にその日は予定ないからいいよ」
彼「じゃあ決まり。場所は俺が決めてもいいかな」
私「いいけど、どこに行くの?」
彼「それは、当日までの秘密。じゃあまた」

そう言って彼は、席を立った。勢いに任せて誘ってみたけど、たまには、勢いも大切だな
と感じた。

食事の場所は、彼が決めるって言っていたけど、一体どこに連れて行くんだろうと気に
なって仕方ない今日この頃だった。

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